5日だけの二人
「すいません。そんなに大事な物だとは思わなくて、だから今度会った時に返せばいいかなって思ったんです。 それで…、拾った時に中を見たんですけど、大事なのは中に入ってる写真ですかね?」
「…うん。そっか、そうですよね。 中を見たから預かってくれてたんですよね。 あの写真は、もうそれ一枚しか無いんです。フィルムカメラで撮影した写真だからデータは無いし、ネガも今は無くなってしまって。 だからその一枚を無くすと訳にはいかないんです、すごく大事な一枚だから。」
とりあえず探し物が見つかった安心感からだろうか、ユカはだいぶ落ち着いた話し方に戻っていた。
「わかりました。じゃあ俺が責任を持って預かっておきますんで、今度会った時かミカに渡すかしますよ。だから安心して下さい。」
そう言うと光一は、定期入れを無くさないように机の引き出しに入れようとベッドから降りる。 しかし、この時の光一はまだまだ認識不足だったと言えよう。何故なら、ユカの焦りや心配の度合いを見誤っていたからである。
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