5日だけの二人
そのまま光一は部屋の奥まで行き、引き出しから例の定期入れを手に取ってから戻って来た。 そしてそれをユカに渡してこう言った。
「はい、ちゃんとここにあるからさ、そんなに辛そうな顔しないでよ。」
定期入れを受け取ったユカは、中の写真を確認するとホッとしたような表情を浮かべたかと思った次の瞬間、その場に崩れるように座り込んだ。 慌てて光一は彼女を支えるべく抱きとめた。
「っと、…大丈夫ですか?」
ユカは少しだけ涙を流していたが、やがて笑顔で答える。
「安心したら気が抜けました。 本当にありがとう、でもしばらくは動けそうにありません、すいませんがしばらく待ってて下さい。」
どうやら彼女は相当に気が張っていたようだ。 彼女はしばらくこのままでと言っているが、玄関先の冷たい床の上は辛いだろう。 そう思った光一はユカをゆっくりと抱きかかえる。
「ひゃっ…、っ?」
いきなりの事にユカは驚きの声を上げた。それもそのはず、
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