5日だけの二人
光一の行動が突然過ぎた事もあるが、抱きかかえられたユカの状態はいわゆる“お姫さま抱っこ”だったのだ。 さすがに恥ずかしかったのか、ユカの顔は見る見るうちに赤くなっていった。 もちろん光一には何かの意図があっての事ではなく、単純に体を気遣っての行動である事は言うまでもない。 光一はユカを部屋の奥にあるベッドに寝かせると、彼女から靴を脱がせて玄関に並べる。
「光一さん、ご迷惑をおかけしてすいませんが、もう一つだけお願いがあるんです。」
光一は台所でコップに水を注いでいた、ユカの言葉に振り向いたのだが、彼女の行動に驚いてコップを落としてしまう。
「ちょっ、ユカさん? 何してるんですか?」
ユカは上体を起こすと着ていたシャツのボタンを上から順に外していった。 慌てた光一が目を逸らそうとした時、
「これをお願いします。」
ユカが首からネックレスのような物を外して、光一に渡そうと手を差し出した。 よく見るとそれはネックレスではなかった。 そこには細い革製の紐に、ネックレスならではのトップと言われる飾りは無く、その変わりに小さな四角くて黒い箱がぶら下がっていた。
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