5日だけの二人
一瞬何かと思ったが、すぐにそれは車の鍵だと理解した。 最近ではそう珍しくないタイプの、持ってるだけで鍵の開け閉めができる鍵だ。
「車がどうかしたんですか? それとも車内から何か取ってきて欲しいとか?」
とりあえずユカから鍵を受け取るとベランダから外の駐車場付近を確認する。 おそらく近くに停めてあるはずだ。 アパートに付随している駐車場を端から目で追った光一は、ユカが何かを言う前にその依頼内容を理解した。
「ああ、そういう事ですか。 わかりました、すぐにやって来ますか安心して休んでいて下さい。」
光一は再びユカをベッドに寝かすと、すぐに靴を履いて外に出た。 鉄製の古びた階段を降りながら、再び駐車場を確認する。 それは異様な光景だった、駐車場入り口付近に停まっているユカの車は駐車スペースの枠には入っていない。 それどころか道路に対して隅に寄せてもおらず、ここの敷地に入ってそのまま車を降りた感じがする。 驚いた事に運転席のドアすら開いているではないか。
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