5日だけの二人
「もう、仕方ないな。 今日だけだからね。」
光一はワカの事を持ち上げる、先程と同様の姿勢で抱えながら膝で器用にドアを占める。
「あれっ? 意外に重いな、何か持ってる?」
背格好はユカと同じくらいだが、明らかに彼女のが重い。 はて?手に持ってるカバンが原因だろうか? 光一にしてみれば些細な問題だったが、言われたワカにしてみれば大問題だ。
「失礼ね、これでもお店ではスレンダー美人で売ってるんだからね。 まさかミカと比べてるんじゃないでしょうね?」
光一の一言でようやく目が覚めたのか、ワカはひたすらに話し続ける。 もちろん、ミカと比べたのでは無く、ユカと比べて重いと感じた事は内緒だ。
「いやいや、ごめんね。ワカちゃんの事を悪く言うつもりじゃ無かったんだよ。」
「でもヒドいよ。それに私の事はミントって呼んでって言ったじゃん。」
階段を上がりようやく部屋の中に入ったのはいいが、あまりの騒々しさにユカが起き上がってこちらを見ていた。 光一は苦笑いを浮かべながらユカを見る。
「とにかく落ち着いて。」
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