５日だけの二人

「光一さん、一つだけ言っておきますけど今日のワカはお酒を飲んでいます。 だから先程の行動もそのせいなのです、だからどうか彼女を責めないで頂けますか？ 」
その状況を第三者が見たなら、動揺している光一を落ち着かせようとしているとしか見えないだろう。 ワカもその時はそうだと思っていた、しかし、ユカのこの言葉には全く違った意図が込められていたのだ。 そしてそれは光一にだけは如実に伝わっていた。
「…うん。 わかってるよ、ワカちゃんは悪くないから大丈夫。 ちょっと俺が油断しただけだからさ。」
これを聞いたユカは表情を曇らせる。 それは“焦り”から来るのだと即座に理解したのはワカだった。それは長年一緒にいた姉妹なのだから当たり前なのだが、何故今のタイミングでユカが焦っているのかは推察できなかった。 しかし、ユカには今後の展開が予想できていたし、実際にそれは正しかった。 しばらくして光一が静かにこうつぶやいた。
「これは…裏切りだよな、ミカに何て言ったらいいかな。」
下を向いたまま力無くつぶやく姿は、二人から見てわかる程に落ち込んで見えた。