5日だけの二人
さすがのワカも事の重大さを理解した。 きっと光一は今のキスの事を妹のミカに謝るつもりなのだ、 下手をするとミカとはもう会わないつもりかもしれない、それをユカは気がついていたのだと。 たちまちにワカはパニックに陥る、どうしたら良いかわからずに涙が止めどなくあふれてきた。
「…ごっ、ごめんなさい…、あの、私…そんなつもりじゃ…」
その言葉の示す通り、ワカ自身に深い理由はなかった。 もともと光一の事は好きだったが、それは友達の様な意味合いである、決して妹の大事な人を取ろう等と考えた訳では無かった。 酒のせいもあるが、ワカのオープン過ぎる性格があだとなってしまったのだ。
「待って下さい光一さん、ミカは…」
なんとか光一を止めようとしたユカだが、光一の言葉に遮られる。
「無理です、俺はあいつに正直でいたいんです。それに、あいつは俺を信じてくれています、それすら騙す事はできません。」
普段の温厚な青年からは想像しにくいが、光一はかなり頑固な性格なのだろう、はっきりと自分の意見を口に出して周囲の話を聞かなかった。
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