5日だけの二人
「病院まで行ったんですか? 電話で説明すれば済んだのでは?」
光一の疑問は自然なものだ、おそらく誰が聞いても同じ感想を抱くだろう。
「そうですね。冷静に考えたらそれが正しい判断だと思います。もしかしたら私は期待していたのかもしれません、ミカは本当は病院にいて、私達が来るのを待っているのではないか?なんて。そんなはずないんですけどね。」
ユカは少しだけ辛そうな表情を見せる。
「まさか、本当にいたんですか?」
そんなドラマや小説みたいな話があるのか? まるで誰かの妄想話でも聞かされているかのような錯覚にとらわれた光一は、自分とミカのこれまでの事を思い出していた。
「ええ。そこにいたのは間違い無くミカでした。長時間の手術で疲れた表情をしてましたが、私を見るとホッとした顔を見せたあの娘は、ミカ本人以外に考えられません。そりゃ確かにいろんな事を考えましたよ、やっぱり怖かったし、だってつい先日あの娘の葬儀をしたんですよ。 けどね、気がついた時にはもう、あの娘の事を抱きしめていました。そして決めたんです、この娘が誰だろうと関係無い、この娘は私の妹だと。」
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