５日だけの二人

もちろんいつかは話さなくてはならない。だがまだ真実を伝えれる覚悟を光一は持っていなかった。だとしたら、この場では何も話す事はできない。この二人に真実を悟られてはいけない。光一は自分の動揺を押し殺す様に口を開く。
「新メニュー？、そうか、お前の料理は久しぶりだから楽しみだ。」
あくまで今日は客を装ってやり過ごす事にした。のだが…、思考を落ち着かせる間もなく事態はいつも急速に展開するものだ。突然ガチャリという音と共に店のドアが開き、そしてそこに現れた人物は光一を見るなりこう言った。
「あっ、やっぱりここにいたね。お兄ちゃん携帯見てないでしょ？」
店内にスタスタと入って来たのはミカだった。突然の事に光一は頭が真っ白になった。例の話を聞いてからミカと会うのはこれが初めてだ。彼女に対してやましい事は無いが、せめて心の準備はしておきたかったけど、どうした事だろう、気がつくと光一は無言で立ち上がりミカを抱きしめていた。
「え？ ちょっと何？ 何かあったの？」
突然の事に驚くミカだったが、少しだけ嬉しそうな表情を浮かべる。