5日だけの二人
何としてでもこの場はやり過ごしたい。そんな光一の考えが滲み出るようなコメントを、ミカが見逃してくれるハズもなく。
「ふ~ん。そうなんだ? とりあえず正座!」
ミカはゆっくりと地べたを指差す。その所作はなんともスローだったが、雰囲気はとても怖かった。
「せっ、正座?」
「早くっ!」
逆らえない。そう思いながらも光一は桐山に視線で助けを求める。一応ここは桐山の店だ、今は中村しかお客さんがいないとはいえさすがに迷惑だろう? と願ったのだが、桐山は何を思ったのか笑顔で視線を受け止めていた。おそらくは光一とミカのやりとりを微笑ましい光景として眺めていたのだろうが、彼の落ち着きぶりに光一は何だか悪意すら覚えるのだった。 もう逃げられない、こうなったら正直に話すしかない。 光一が意を決して口を開こうとしたのだが、一瞬早く先にミカが切り出した。
「土曜の夜っ! 私に内緒でユカ姉達を泊めたでしょ?」
その言葉に一瞬冷や汗をかいた光一だったが、それは「土曜の夜」という単語に反応したのであって、後に続いた文章は想定外のものだった。
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