5日だけの二人
光一は釈然としないながらも、女の子に服を選んでもらうのは初めての経験なので、なんとなくだけど楽しいと感じており、相変わらず鏡の前で独りファッションショーをやっていた。
「何か気に入ったみたいだね?」
一枚のシャツを手に、ミカが戻って来た。
「おおっ。何かオシャレな人になったみたいで楽しくてな。」
それを聞いたミカは嬉しそうに、
「そう。良かった。お兄ちゃんは細身だし、背も高いから良く似合うよ。」
そう言うと、持って来たシャツを光一に渡す。 それは薄手の半袖シャツで、水色の大柄チェック模様の物だった。 一見するとどこにでもありそうな代物だが、さっきのズボンみたいに、何か違いがあるのかもしれないと考えた光一は、とりあえず黙って着てみる事にした。
「どう? ちょっと癖があるけど、背中から腰にかけて絞ってるからスタイル良く見えるでしょ?」
光一は後ろ姿をじっくり観察する。
「確かにな。俺が持ってるシャツだと、ただただ細いだけだからな。」
思いのほか気に入った様子の光一は、しばらく鏡の前を独占していた。
< 33 / 163 >

この作品をシェア

pagetop