５日だけの二人
「そうだ、ちょっと待っててよ。」
男は少女にそう告げると、再び階段を上がる。 それを見送った少女は、近くのベンチに腰掛けた。 それからすぐに男は戻ってきて、
「はい、これ食べたかったんだろ。」
そう言ってソフトクリームを２つ手渡した。 少女は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにそれを受け取ると、
「ありがとう、私が欲しいのが２つだってよくわかったね？」
不思議そうな顔をする少女に、
「前に見かけたからな。その時も２つ持ってた。 それにほら」
と言って地面を指差す。 そこには、少女が転んだ時に落としたであろうソフトクリームが２つ転がっていた。どこから入ったのか、野良猫が数匹群がっていて片づけられない。
「そっか。やっぱりあの時の…」
しばらく考え込んでいた彼女は、ソフトクリームの一つを差し出し、
「はい、こっちは食べて。」
と言って男に渡す。
「いいのか？」
「うん、２つあれば良いの。 だからそれは、あなたが食べてくれたほうがいい。」
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表紙・目次

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