５日だけの二人

「こら。さっき俺が言った事全然わかってないじゃないか？ からかうにしてもやり過ぎだ。」
すっかりテンパってしまった光一は、そのままミカを見ないように風呂を出ようと立ち上がる。しかし、
「待って。」
ミカが光一の後ろから抱きついてきた。 もし、この時のミカが悪ふざけのノリで抱きついて来たのなら、光一は軽く振りほどいて浴場を出ただろう。しかし、ミカの雰囲気がそれをさせなかった。
「からかってる訳じゃないよ。 …恥ずかしいんだよ、だからわざと変なテンション演じてるんだよ。」
光一は、背中から感じるミカの体温の冷たさと、彼女の手が震えている事にようやく気がついた。
「そうだよな、そりゃそうなるよな。」
光一はミカの手を握る、
「私は…」
ミカの言葉に光一はドキッとする、しかしミカはそれっきり何も言わない。
「ミカ？ どうしたんだ？」
ミカの手を握る手に力が入る。
「お兄ちゃん、私…、お兄ちゃんの事…」
ミカが言いかけた台詞は、光一によって遮られる。