5日だけの二人
「ありがとう。俺も見ましたよユカさんの車、かなり本気で手を入れてますね? 思わず見とれました。」
光一がそう答えるとユカもがぜん食いついてきた。
「いえいえ、まだまだですよ。全然乗りこなしてませんから。良かったら今度走りに行きましょうよ? 実は私、今の車を買う時にあなたの車種とどちらか迷ったんですよ。できたら運転してみたいですし。」
光一は軽くテンション上がるのを感じると共に、ミカが恐ろしい程に自分を見ている事に気が付いた。“ああ、まずいな、さっきのミントの時と同じだ”、ここはさっさと会話を切り上げてミカと出掛けた方が良さそうだ。光一はミカの視線に気がつかないフリをしつつ、
「わかりました。ではとりあえず今度にでも。 じゃあミカ、そろそろ出掛けようか?」
と、速やかに会話を終了させ立ち上がった。
「私も買おうかな。」
“何を??” そう言いかけた光一だったが、冷静に考えてみれば答えは一つだ。
「車をか?」
「車よ。」
ジッと見つめるミカの表情は、彼女が本気である事を鮮明に表していた。
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