5日だけの二人
服飾店やアクセサリーショップでウインドショッピングをしたり、本屋で立ち読みをしたりと、驚くほどに普通である、安心なほどに。 そろそろ引き上げて仕事に行こうかと光一が考え始めた頃、ミカは町外れの小さな寺院に入って行った。近道か何かだろうか?などと光一が考えていると、ミカは迷わずに敷地の奥に向かって歩き出す。ミカの向かう方向に通り抜けできる様な道は無い、そこには広い墓地があるのみだ。 はて? 光一は首を傾げながらもミカの後を付いて行ってみる。 広い墓地の一画にひっそりと並ぶ墓石の一つ、その前でミカは立ち止まった。そしてポケットから缶コーヒーを取り出すとその前に静かに置いた。 状況だけを考えたなら、ミカはお墓参りが目的でここを訪れたのだと推測ができる。しかしながら、彼女の表情からは何の感情も読み取る事はできなかった。 まるで何も考えていないかの様な、何も感じていないかの様な表情をしているのだ。 それからしばらくして、ミカはその場に座り込み墓石に向かって静かに話しかける。
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