5日だけの二人
なんだか光一は嬉しくなり、このままミカの前に出て行こうかどうかと考え始めた。 しかし、そんな光一の思いは、この後のミカの言葉によって打ち砕かれる、
「最近ね、毎日が楽しいんだ、まるで、あんたがいた頃の様にね。 ずっと忘れていたよこんな気持ち。」
この言葉を聞いた光一は、僅かにめまいを覚えた。 ミカは今何て言った? “あなたがいた頃”? いくら中学生とはいえ、彼氏がいたとしても不思議では無い、もちろんショックと言えばショックだが、今の状況から察するに、その人物は既に亡くなっているのだろう。そしてミカは、こうやって会いに来ているのだ、かつてのミカの大事な人に。 光一は思った、自分はこの場にいてはいけないと、これ以上ミカの心に踏み込んではいけないと。 再び立ち上がった光一は、ミカの死角になる様な角度を探しながら歩いて行き、フェンスを強引に乗り越えて外に出た。その際、ミカが話し込んでいた墓石をチラッと見る。 そこには“八神家”と書かれている。もしかしたら、ミカが大怪我をしたという半年前の事故で?なんて事を思ったりした。
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