5日だけの二人
「表情が緩んでる? 俺がですか? 自分ではそんなつもり無いんですけど。」
きっといつもの冗談だ。光一はそう思いながら森を見る。
「まあ、緩んでいると言うか、にやけていると言うか、とにかく最近楽しそうだよな。なんか雰囲気が変わったよ、なんて言うか悪い意味じゃなく明るくなったかな。」
と、割と本気の返答が返っ来た。
「森課長はここで何を…?」
そう聞きながら光一は、森が左手に持っているバケツと花を見た。
「私も、まあ…、サボりかな。息子の墓参りだよ、最近来てなかったからね。」
森も自分の持っている花をジッと見ながら答えた。 この時光一はふと思い出した。 森課長の息子さんとミカは同じ事故に遭遇している。 だとしたら現場にいた二人は知り合いだったかもしれなし、さっき見た墓石の八神という人物の事も知っているかもしれない。
「あの…、部長は海路という名前に知り合いはいますか? あるいは八神とかは?」
これを聞いた森は一瞬驚いた様な顔をするが、
「そうか、この前君が連れていた娘は海路家の…。 知ってるよ、息子のクラスメートだった。」
< 88 / 163 >

この作品をシェア

pagetop