5日だけの二人
何度もここを訪れては、同じやりとりを繰り返してきた。そのうち運転手は何も言わなくなったのだ。 もちろん心配ではある、しかしながら老人はかたくなに同行を拒否するので、仕方なく従っているのだ。
老人はゆっくりと階段を昇っていた、その歩みは決して遅くは無い、まるで一歩一歩を噛みしめるかの様に着々としたものだった。外見から伺える年齢はだいたい七十代といったところだろうか、品の良いスーツを身にまとい身だしなみもしっかりと整っている。 まるでどこか大企業のお偉いさんを連想させる様な人物であった。
寺院を通り過ぎ老人が歩みを止めた場所は、先ほどまで光一達がいた墓石の前だった。
「また来たんだ?」
老人の後ろから女の子の声がした。帰ったと思われていたミカが姿を見せる。
「…」
しかし老人は黙ったまま墓石をジッと見つめていた、
「そんなに頻繁に来なくていいよ。」
ミカは少し複雑な表情をしながらも語りかける。
「ここに来たらお前に会える様な気がしてね、つい足を運んでしまうよ。」
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