蝶々の欠片
「やっぱり頭を強く打ったのね。自分のこと【僕】だなんて、、。」
水希は悲しそうに僕の手を握った。


ワカラナイ。


確かに僕は僕だ。皆から可笑しいって、直したほうが良いって、そう言われてたけど。行動も男の子みたいで、普通じゃなかったけど。

カサネはそれで似合ってるって笑ってくれた。泣き虫で弱い、僕が守ってあげなきゃいけない幼馴染みの男の子カサネ。
いつだって反対だったら良かったのにねって母親同士が本気で悩んでたっけ。


「カサネに会いたい」


ポツリと呟いた言葉に水希が首を捻る。
「カサネ?誰?私の知らない友達かしら?」

「お母さんの親友の子で近所に住んでた、、。」

「ママはずっと海外出張じゃないの!私達は親戚のお家に住んでるでしょ?ずっと昔からね。幼馴染みにカサネなんて子は私が知る限りはいないわ。」
困惑したように水希がギュッと手を再度握る。
僕はその手を振り払って叫びだした。
「嘘!お母さんもお父さんも一緒にくらしてた!!」
その言葉を聞いて水希が悲しげに言う。
「和希、、パパは最初からいないわ。全部貴女の妄想よ。。いて欲しかった、寂しかったっていう。頭を打ったから、、少し混乱してるのよ。ね?ゆっくり休んで。」
そう言うと、水希は明日また来ると言って部屋を出ていった。

知らない筈がないのに。
本気で知らないみたいに。
苦しくて息が上手く出来ない。


「あ、あ、あ、、、あぁ」
混乱、絶望?、こんなに簡単に人は心が破れそうになるの?
まるで世界に1人取り残されたみたい。


苦しい。


刺された筈の胸の傷、今や傷なんてないんだけれど。
でもその傷がジンジンと痛む。


同時にガタガタ、ガタガタと1人部屋の窓枠やクローゼット、色んなものが揺れだす。

「ど、どうして??なんだっていうの?」
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