蝶々の欠片
ベッドから動く事もできずに、前のめりにうずくまる。
自分自身を抱きしめるみたいにしていると、少し揺れも落ちついてきたように思えた。


地震?今日はなんて日だ。
刺されたあげく、こんな仕打ち。


「落ちついて」
頭の上から声がした。
少し上げてみると、そこにはあの時いた女の子がいる。
ちゃんといた。
あの時の事が嘘じゃない証拠が彼女達だ。

「分かる?深呼吸よ。深呼吸。心の揺れは世界に影響を与えるのよ。なるべく何も考えないこと。」
そう言いながら、1人がベッドに腰掛ける。もう1人は壁に寄っ掛かったまま、一言も話さない。あの時から多分話しているのは1人だけのようだ。
オカッパの黒い髪、まるで座敷わらしの美少女バージョン。鈴のなる音のような声で明るく話す。

「覚えてる??」


「当たり前だ!」
叫ばずにはいられなかった。
僕はどうなってしまったのか、知ってるみたいな様子に、何故か怒りがわいてきて止まらない。
また、激しく窓枠が揺れだす。
今にもガラスが砕け散りそうだ。

「沢村和希、か。」
全然気付かなかった。不意討ちのように背後に誰かがいた。自分の名前を呟かれて振り向こうとしたが遅かった。
瞬間的にベッドに押し倒され、両腕を痛いくらい掴まれて身動きが取れない。
次の瞬間ギョっとすることになる。

だって、男にキスをされていたから。
力が抜けていく。それと同時に揺れもとまっていく。
「止まった。相性は抜群みたいね。」
「じゃあ、決まりね。マナ、あんたが説明してね。」
初めてしゃべったかと思うともう1人の女の子はさっさと部屋を出てしまった。
意味が分からない。
というか、いつまでキスしてるんだ!
両腕をもがいて男を突き飛ばす。
最後にペロリと唇を舐められてゾクッと体が震えた。恥ずかしいやら情けないやら悲しいやら、睨みつけるとそこにいた男は、、、



「カ、カ、カサネ!?」
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