涙々~RUIRUI~
11時半…。
わたしは眠れなくて、本を読んでいた。お母さんとは11時前に別れた。
雨はすっかり止んで、しんとしている。
もう寝ようとベッドに入ったら、ガチャン…。玄関のドアが閉まる音がした。
瞬時に、体を起こす。
それから隣からまたドアが閉まる音。そしてすぐに布団の擦れる音がした。
『はぁ…』
涼哉のため息だ。涼哉が帰ってきた。
「涼哉…」
無意識に壁に向かって名を呼んでいた。
『ん?……蕾?』
「ぁ…っ」
『起こしちゃった?ごめんね』
わたしの声が聞こえたのか、涼哉が壁越しに話してくる。何だかむず痒い。
「いや、眠れなくて…」
『そうだったんだ。あ、ただいま』
「おかえり…」
壁があるため、少しくぐもった声だ。
何気なしに、壁に手を当てた。そっと…。
『蕾?』
「ん…?」
『眠れそう?』
「うん…」
『そっか。じゃ、おやすみ』
「おやすみ」
向こうからコンッと音がした。わたしも合わせて、当てていた手を拳に変えて当ててやる。
窓からは月明かりが、わたしを優しく照らしていた。
きっと壁の向こうもそう…。