絶対的愛情



彩美に会うのは、何年ぶりだろう…。


瀬戸さんと待ち合わせしている間、そんなことを考えていた。


「あー!松井 俊介!」


瀬戸さんの高い声に、それは打ち砕かれる。
人の名前を公衆の面前で、叫ばないでほしい。


「そんな大きな声を出さなくても、聞こえます」


「だって、久しぶりに会えて嬉しくて」


彼女は"久しぶり"だと言うけれど、先週会ったばかりだと僕は思う。


「しかもフルネームで呼ばれるのは、ちょっと…」

「じゃあ、俊介って呼んでいいの?」


「好きに呼んで下さい」


彼女を見ていると、夏に咲くポーチュラカを思い出す。カラフルな小さい花をたくさん咲かせて、雨の日には花を閉じてしまう。

花言葉は、"無邪気"。

彼女の事はよく知らないけれど、僕の隣を笑顔いっぱいに歩く姿を見て、そんな気がした。


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