絶対的愛情


僕はキリマンジャロを、彼女はブルーマウンテンを注文した。
店内はクラシックがゆったりと流れていて、静かだ。


「なんか、面と向かって座ると…緊張する」


彼女は、俯いたままカップを両手で包み込んだ。冷えていた手を温めるように。


「そういう時は、深呼吸が一番ですよ」


そう言う僕も、何故だか緊張してきた気がする。伝染したみたいだ。

お互いに見つめ合ったまま、笑ってしまう。


「本当、真面目だよね」


「いい意味で言ってます?」


「さあ?」


共感できる話題が特別あるわけでもないし、この事について話そうというものもない。

けれど、たまには悪くないと思う。

堅苦しい自分自身の思考を解してくれるような、瀬戸さんとの時間。


笑顔は、心を穏やかにしてくれるもの。


久しぶりに、そんなことを思った。


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