絶対的愛情



待ち合わせのロビーには、テレビ局がたくさん押し寄せていて。

彩美の登場を、カメラを構えて今か今かと待ちわびている。

やっぱり、帰ろう…

そう思って踵を返した時、一斉に騒がしくなった。


「来ました!小嶋 彩美さんです!」


女性リポーターの大きな声が響く。


大きなスーツケースと一緒に、笑顔で出てきた彩美を見て。


「…変わって、ないな」


僕の小さな呟きさえも、揉み消されてしまう。


周りをぱっと明るくする笑顔も、ショートカットも、彩美は彩美のまま変わっていない。


それどころか、輝きを増したかのように生き生きとしていた。


押し寄せる報道陣に笑顔で対応して、たくさんの人混みの中僕を探している。



「俊介っ!」


目が合って、彩美が僕に向かって小走りで近づいてきた。


「えっ…」


彩美から僕へとスポットが変わった瞬間。



「ただいまっ!俊介!」




思い切り抱きつかれた。




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