絶対的愛情
☆☆☆☆☆☆
「どうしてくれるんだよ、彩美」
報道陣が引き、やっと車に乗り込んで空港を後にした。
「久しぶりに会ったのに、冷たいなー」
「ただの一般人じゃないんだ。今後に影響が出るだろ」
彩美は悪びれもなく、おっとりとした雰囲気のまま。
焦っているのは僕だけみたいだ。
「いいの、あのくらいしなきゃ。悪い虫が寄ってくるじゃない?」
「だからって…」
全国放送であの映像が流れると思うと、ゾッとする。
「まさか来てくれると思ってなかった。ありがとう、本当」
空港からさほど遠くない距離に、彩美が滞在するホテルがあるという。
「明日から慌ただしいけど、一ヶ月はいるつもり。ご飯くらいはゆっくり食べようよ。研究のこととか、話したいことはたくさんあるし」
ホテルの駐車場に入り、彩美が連絡先をメモ用紙に書いた。
その時、突然携帯が鳴る。
「…出ないの?」
「…出ないと、後々大変だ」
瀬戸さんからの、電話。
シートベルトを外して、通話を押しながら外へ出た。
.