絶対的愛情
私は綺麗に畳んだ白衣と傘を手に、某大学の前に来た。
白衣の胸ポケットに、『〇〇大学先端生命科学研究所』と赤い刺繍が入っていたから。
キャンパス内に併設された研究所へと足を運ぶ。
脳裏に焼きついているのは、優しく微笑んだ彼。
白衣一枚羽織ったところで、震えなんておさまらなかったけれど。
ズタズタだった心が、息を吹き返したように大きく弾んだ。
私、まだ頑張れるって。
「あの~…私、一週間程前にお世話になった方へ返却したいものがあって伺ったんですが…」
自動ドアを抜けて、事務のお姉さんに話しかけると困った顔をされてしまった。
「えっと…誰宛てでしょう?」
「それが…ちょっと名前を聞きそびれてしまいまして…」
「では、こちらでお預りします」
私と彼を繋ぐ、唯一のもの。
ここで終わってしまったら関わることなんてもうないだろう。
そう思ったら、お姉さんに白衣と傘を渡してしまっては駄目だと気付いて。
「あ、だっ大丈夫です!直接会ってお礼も言いたかったんで…失礼します」
ぺこりとお辞儀をして、私はそそくさと研究所を後にした。
「あれ?君…」
はっとして振り返る。
.