絶対的愛情
『いよいよ発売まで2週間を切りました。全国各地予約殺到の国内初、アンチエイジング美容液"セラノライト"。開発部門責任者の小島彩美さん、商品についての説明をお願いします』
たくさんのフラッシュがたかれる中、笑顔でマイクを手に取る彩美をテレビ越しに見ていた。
『この度、セラノライトの発売に伴いお集まり頂いた皆様…』
彩美が開発したセラノライトは、恐らくセロリのセラノライドと、セラミド、その他様々な成分を組み合わせて出来た新しい成分だ。
この成分を作る事に成功するまでに費やした時間は約5年。
『小島さん自身でも使われていると伺いましたが、その効能効果は小島さんによって充分に証明されているのではないでしょうか。とても34歳とは思えない程、肌がお綺麗です』
『ありがとうございます。誰でもシミやそばかす、シワに悩んでいる方はたくさんいると思いますが、このセラノライトを使えば絶対に若々しい肌を取り戻すことが出来ます』
自信に満ちた彩美は本当に綺麗な女性だと思う。
雑誌にも多数、表紙を飾ったくらいだ。たくさんの芸能人を差し置いて女性の憧れの的となった彩美には、何も怖いものなんてないのだろう…
『3月上旬にはアメリカに帰られるそうですが、今後の活動の予定を教えてください』
『はい。一旦アメリカに帰って、残っている仕事をします。その後、開発チームの移転を考えております。ある国の研究所からお声がかかってまして、前向きに検討している所です』
『では、日本での芸能活動はせずにまた新しい研究をされるということですね?』
彩美が、テレビ越しに僕に対して不敵に笑ったように思えて。
僕はマグカップを口元に運ぶのを忘れたまま、背筋が凍るのを感じた。
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