絶対的愛情
「しゅ…」
"俊介"と呼ぼうとして、辞めた。
待ち合わせをした公園のベンチに座って、文庫本に視線を落とす彼の横顔が、ひどく私の胸を締めつける。
久しぶりに見る彼に見惚れてしまうなんて。
暫く、見ていたい。
そう思ったから、立ち尽くしたまま言葉を飲み込んだ。
なんで、こんなに好きなんだろう…
胸の奥から込み上げる確かな感情が、喉から出てきてしまいそう。
「瀬戸さん?」
「あっ…俊介!」
気が付くと、彼は私の前に立っていた。
「元気になったみたいですね」
優しく笑って瞳を細める。いちいち私の胸はドキドキと高鳴って、声さえうまく出せない。
私、俊介病かもしれない。
なんて、何バカな事考えてるんだろう…
「お陰さまで!俊介も元気そうだね」
「僕は滅多に風邪はひきませんから」
嬉しい。会えてすごく、嬉しいと思う。
「どこか入りますか」
3月に入ったとはいえ、まだ寒さは和らいでいない。冷たくなった手を擦り合わせながら、私は頷いた。
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