絶対的愛情
「松井とはどのような関係ですか?」
近くのカフェに入り、コーヒーを一口飲んで梶井さんは私を真っ直ぐ見つめた。
「えーと…私が今片想いしていると言うか…付き合ってはないです」
「そうですか…。では早い方がいいでしょう。松井にはドイツの研究所へ推薦の話をしました」
「え…?」
初めて聞く内容に、言葉を失う。
ドイツなんて…。
「このドイツでの研究は、松井にとってチャンスであり、夢なんです」
「夢…」
彼が何故研究をしていて、どんな夢を持っているのかさえ私は知らない。
指先がひどく冷たくなっていくのを感じていた。
そんな素敵な話、俊介なら悩むことなく承諾したはず。
「なんですが、昨日急に断られましてね…。正直驚きました。このチャンスは二度とないですから」
私はハッとして梶井さんを見た。断る理由なんてないのに、どうして。
そして何故私にこんな話を…?
言葉が次々に溢れ出すのに声にならない。
「わざわざあなたに時間をとってもらい、私がこの話をしている意味が分かりますか?瀬戸さん」
ただ、怖いと思った。
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