絶対的愛情
★★★★
「お疲れ、返事したんだって?もう噂になってたけど」
「あぁ、さっきしてきた」
ロッカー室に原田が顔を出した。
ちょうど誰かに聞いてほしかった僕は、どこかで原田を待っていたのかもしれない。
「なんで断ったんだよ?」
「日本にいたいから…」
「え?それだけ?!」
鏡の中の自分を見ている原田が、珍しく僕を見た。
「日本にいたい理由が、出来た…」
きっと、数ヵ月前の自分だったら迷うことなく承諾していたけれど。
この胸の奥が温かくなる理由が知りたい。
誰かと一緒にいたり、誰かを想うことでこんな風な感情が生まれるのは初めてだった。
瀬戸さんが、笑うと僕も笑う。
それだけで、まるで実験が失敗なく成功した時のように嬉しくなる。
「女?」
原田に言われて、はっと我に返った。
「その理由って、女ができたこと以外に思いつかないんだけど」
「自分でもよく分からない…でもこのままあっちに行ったら、後悔すると思って」
「らしくないけど、なんか嬉しいわ。なんだかんだ会えなくなるの寂しいって思ってたしな」
原田は屈託のない笑顔を見せて、俺の肩にぽんっと手を乗せた。原田のように、素直に感情を口に出来たらいいのに。
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