絶対的愛情
痛みを寒さのせいにしてしまえば、それで楽だった。
「ひとつ、聞いていい?」
「何?」
彩美は少し間を置いてから、瞳をふっと伏せる。
「一度、ドイツ行きを断った理由は?」
「ここにいたいって、ただそう思っただけだよ」
思い出すだけで、胸が締め付けられるような苦しさが襲う。
理由なんて、分かっているのに。
「驚いた…この話は俊介の全てになるのに。それを…断るなんて、私の知ってる俊介じゃないって…」
そして、今更この道を選択したことが誤っていたと気付く。
彩美と梶井教授が、繋がっているからこそ…
「だから教授が瀬戸さんに僕を説得するように話したってことか」
「何の事?」
こんな、惨めな思いを。
瀬戸さんを苦しめる事も、全部。
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