絶対的愛情
今更になって後悔する。
本当にこれでよかったのか…
でももうきっと、俊介は日本にいないかもしれない。
最後くらい、空港に見送りに行けば良かったな…。
やわらかく心地の良い風に、春の訪れを感じる。
あちらこちらで桜の開花が始まって、菜の花の鮮やかな黄色が目に染みた。
「美優…?」
こんな広い街の中で、どうして会ってしまうのか。
「…たかひろ。久しぶりだね」
私を振った元彼に、会ってしまうなんて。
「元気?」
「うん…なんとか」
忘れていた思い出が、温もりが、全身を駆け巡る。
「痩せたんじゃね?相変わらず小っちゃいな」
「貴大、こんなとこで何してんの?」
平日の昼間。私は有休をもらって、気分転換に買い物に来ていた。
貴大は、大きなリュックを背負っていて、首からカメラを下げている。仕事の途中かもしれない。
「俺?あぁ、ちょっとこの辺に仕事で。最新スクープの取材」
「最新スクープ?」
なんとなく、嫌な予感がした。
「ほら、あの小嶋彩美がまたお騒がせでさ。○○大学まで行くんだよ。美優の家の近くだからもしかしたら…とは思ってたんだけど本当に会うなんて思わなかったわ」
俊介と小嶋彩美のスクープだと、すぐに理解して貴大の言葉なんて耳に入ってこなかった。
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