絶対的愛情
「うわ、本当に行くつもりだったんだ?」
瀬戸さんは荷造りしてある部屋を見て愕然としていた。
生活用品は全て買い換えるつもりでいたし、残された家具は日本に帰国した時に困らないように置いて…
「すみません、誘ったもののお茶のひとつも出せませんね」
「ううん、いいの」
ソファに腰を下ろした瀬戸さんは、ぽんぽんと隣を叩いた。
隣に座れと言うことだろうか。
「あたし、まだ聞いてない事がある」
「何ですか?」
何となく、嫌な予感がする。
「俊介の気持ち、ちゃんと聞いてない」
やっぱり。途端に鼓動が速くなるのは、緊張してきた証拠だ。
「僕は…瀬戸さんの事を…」
シーンと何も音がない世界で、瀬戸さんがじっと僕を見つめている。
「す…凄く…」
「うん」
苦手だ。だけど、言葉で伝えなきゃ。
「好きです。瀬戸さんが好きです」
その先に待っている幸せは、想像を遥かに越えて教えてくれるから。
嬉しそうに笑った彼女の笑顔が、とても綺麗だと。
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