ORANGE×LEMON
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「ゆいー?夕飯よっ!」
中学の頃までは、両親と共に、普通の一軒家で暮らしていた。
元気に私を呼ぶ声を合図に2階の自分の部屋から居間へ降りてゆく。
食卓にはいつも母の手作り料理が並ぶ。
人並みに頑張り屋の母は、パートを掛け持ちしながらも家事は怠る事もなかった。
私は当時、テニス部に所属していて部活一筋だった。
常に練習だったが、そんな私を母はいつも応援してくれていた。
ただ、無愛想な父だけは私たちを知らぬふり。
夕食を共にする事は月に数回程度。
普段嗅ぎなれないキツい香水の匂いを身に纏って帰ってくる父。
何をしていたのか、中学生という年頃の私でも理解していた。
だが、母が何も言わないので気づかない振りをしていた。
2人で夕食というのが、当たり前になっていたし、ほとんど喋らない父とはどこか遠い距離を感じていたので、母のほうが必然的に親しみやすかったのだ。
それからは、あっという間だった。
中学3年になる頃には、両親はよく喧嘩をするようになっていた。
私が受験生というのもあってか、よく寝た頃に怒鳴り声やガラスが割れる音が響いてきた。
それでも私の前では、何事もなかったように母は振る舞い続けていた。