昨日、学校一の不良に壁ドンされちゃいました!



なんでなんでなんで!?

なんで抱きしめられてんの!?
しかもバックハグ!?


微かに聴こえる彼の吐息に、あたしの心臓は脈を速く打っていく。


ヤバい!
こんなの、絶対無理だって!


「んん!むぅ!ううう!」

彼の両手を口から離そうとするけど、彼は中々離してくれない。


「ちょっとだけ、我慢しろよ」

彼は小声でそう言った。
彼が背後にいるせいで、あたしは彼の顔を見ることが出来ない。

彼とあたしはその状態のまま、後ろ歩きで路地裏に入った。

入ったところで、彼に手を離される。


「っはぁー!・・・苦しかったぁ」

口と、心臓がね。
いや、心臓はまだ苦しいけど。

さっきまでちゃんと息が出来なかったあたしは、胸を押さえながら彼を見た。

彼は、さっきまでいた場所をじっと見つめていた。


「ね、ねぇ・・・なんで、いきなり口を塞いだの?」

あたしはそう訊ねてみるけど、彼は黙って、やっぱりさっき居た場所を見つめていた。


「ね、ねぇ」

「・・・ここでは、大声を出さない方がいい」

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