猫の世界と私
けれど、いつもとは違う世界に足を踏み入れている不安感はとても強かった。


何も見えないわけではない。
ちゃんと校舎の中にいるということは分かる。

けれど暗い。
そして、とても静か。


距離はそんなに長くない。
そのはずだ。
一度踏み出した世界、容易く諦めたりしたくはない。


結愛は、乾いた口の中、懸命に息を呑み、止まることなく歩いていた。



「え…ここ…」



曲がることもなく、真っ直ぐに歩いてきた廊下。
暗闇になれた目で、結愛は別の道があることを発見する。

それは階段だった。


結愛は階段を見て、今自分がいる場所が校舎の一番上の階にいることを知った。
この校舎が何階建てなのかは分からない。



「階段、降りるしかないのよね…」
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