猫の世界と私

結愛の呟き通り、階段を降りないことには新しい世界を見ることはできない。


見渡す限りに、結愛がいた教室以外に動くものは見当たらない。
人間がいないことには慣れてはいた。けれど、あんなにたくさんいた猫が、どこを見渡しても一匹もいないことには違和感でしかなかった。


とにかく、この校舎から出なければ…


徐々に結愛の足が早くなっていく。

誰もいないのであれば、様子を伺う必要はない。


寂しさと不安で心を満たしてしまう今の場所から逃げたい…


次第に小走りになっていった結愛は、振り返ることなく一気に１階へと降り、靴箱へと向かった。



「あれ…？そう言えば、何で私…迷わないんだろう…」



ふとした疑問が結愛の頭を過ぎる。
初めて教室を踏み出した新しい世界。
そのはずなのに、結愛は暗闇に不安な気持ちはありながらも迷わずに靴箱へとたどり着いた。

そして、目の前にある自分の名前が書かれた靴箱に手を伸ばしている。