猫の世界と私
「……そろそろね」



呟きと共に失速する電車。
流れる景色がゆっくりと定まっていく。


電車から見えた景色は、初めての景色ではなかった。


やがて止まった電車から降りた結愛は、その駅を見渡すことなく改札を抜けた。



「ここは学校の近くにある駅よね…戻ってきたってこと?」



見覚えがあり、見慣れてもいる身近な駅。
戻ってくるとは思っていなかった結愛は、どこへ行くべきか考えた。

今の状態と自分の格好で学校に戻るとは考えにくい。

だからといって、学校へ行く道とは逆方向へ行く道の記憶は感覚としてもない。

そうなると、向かうのは学校への道以外考えつかなかった。


自分の感覚を信じて、結愛は学校への道を進む。
思えば初めての道ではないとしても、よく周りを見ていなかった。

もしかしたら、以前の世界で遊園地や水族館があったように、何かがあるのかもしれない。

きっと何か感覚が覚えているかもしれない。

今見える範囲に、何も気になる建物はなく、多少不安はあるけれど、足を前に進めていた。
見渡し進む道、そして近づく学校。

もう少しで学校に着こうとした時、突然視界に入った建物に足を止めた。
< 42 / 209 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop