猫の世界と私
「ねぇ、未来さん。もしかして、未来さんは亡くなったんじゃないの?」

「………死ん…だ…?」

「そう。実は、私もそうなの」

「え…?」

「私、死んだ記憶だけはあるの。だから、きっとここは現実の世界じゃない」

「………そっか。私、死んだんだ…」

「何があったのか、覚えてる?」



未来は小さく頷く。
何か遠くを見ているような目で結愛を見ると、未来は自分自身の手を強く握り、顔を埋めた。



「雪が降ってた…その日は、すごく寒くて滑りやすかったの。ちゃんと分かってたはずなのに…階段で滑って、体が浮く感じがした…その先は…分からない」

「そ…っか…」

「私、死んだ…結愛さんは、ここが現実の世界じゃないって言ってたけど、もしかして、死んだ人が来る世界なのかな…?」

「ん、そうでもないみたい」

「どうして?」

「未来さんと…」

「未来でいいよ」

「いいの?」



小さく頷いた未来の頬は赤く染まり、握ったままの手をそのままに、未来の口がパクパクと金魚のように開いていたのを結愛は見逃さなかった。
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