猫の世界と私
5.結愛と瑛祐の思い出
「だ、大丈夫…」

「ホントに?」

「うん…でも、未来…よく暗い所を不安もなくスタスタと歩いていけたね…ちょっと驚いた…」

「そう?暗いようで、そんなに暗いとは思わなかったけどな…私…目が慣れてくるとほら、見えるもんじゃない?それに、そんなに不安になるほど怖い環境じゃなかったよ?」

「え?まぁ…そりゃ慣れれば見えるけど…そんなにはっきり見えるわけじゃなかったよ…近くにあるものは見えるけど、先は全く見えないような感じ」

「ん…たぶん、結愛だから、かも…」

「?」

「きっと、結愛だからそう見えたのかも…」

「どういうこと?」

「この高校にどうして来たかったのか分かる?」

「え?」

「ここは、彼の母校なの」

「…え?彼の母校?」

「そう、彼の思い出の場所」

「……」



座り込んだままの結愛は、目の前にいる未来に首を傾げた。
未来は困ったように目を逸らし、一度目を閉じると、意を決したように結愛に強い視線を送った。

あまりの力強さに、結愛は一瞬怯む。
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