戻せない時間
出会い
私の名前は「千花(ちか)」
キャバクラなんてとても言えないようなキャバクラで副業中

平日は普通の会社員。
営業職で成績には自信あり!のキャリア志向。

会社の飲み会も多いし、銀座、六本木…クラブとか夜遊び大好き!!
でも1人暮らしをしてるマンションは千葉にある独身寮。
終電のがしたら毎回タクシー…はさすがにお財布が辛い。

そんなわけで、寮を出て、遊ぶのに便利な都心に引っ越そう。
でも貯金がないから初期費用が払えない…という訳で、

水商売は学生時代にちょくちょくおこずかい稼ぎでやってたし、引越し資金を手っ取り早く調達するために、週末だけキャバ嬢をすることにした。

都心は昼間のお客さんと遭遇したらシャレにならない。
だから、寮がある駅の数少ないお店でやることにした。

昼間も営業でおじ様の扱いはお手の物、それに自分でいうのもなんだがそこそこモテる。
何回かキャバ嬢をして、本業にしなければこんな楽な仕事はないって正直思っていた。

8月13日金曜日。
遊びたい気持ちを抑えてキャバ嬢初日。都心と違って地域の人しかほとんど来ないような緩い雰囲気のキャバクラのお客さんは予想より全然掴みやすい。初日でも何本か指名も取れる。

この調子なら2ヶ月くらい働けば初期費用もなんとかなりそう。

やっぱこの仕事余裕だ。

お店の社長にも気に入られ、初日終了。

千花は源氏名。
初めてキャバクラで働いた時に決めて気に入っていた。

8月14日土曜日、今日もご出勤。

昨日はそこそこドリンク、指名のバックもついていい感じだったから、余裕綽々。

何回か席について、今日もいい感じ♪

あっという間に24時を回った頃にはお客さんもぽつほつ。

待機するカウンターで仲良くなった女の子達とおしゃべり。
ざ・キャバクラみたいな女の子同士の争いは皆無。それもまた楽でいい。


そこにピンのお客さん。

「いらっしゃいませ」

女の子はみんな立ってお辞儀をするルール

「千花さん、お願いしまーす
得意そうなお客さんじゃない?」

って社長に言われてお客さんの座った席を見る。

「そうですね。なんでも得意ですよ」

なんて冗談半分で返事。

「千花です。よろしくお願いします。」

名刺を渡して飲み物確認。

ボーイにビールをお願いして、乾杯のドリンクを頂く。

このお店は初めてらしい。

仕事のお客さんが近くにあるらしい。

とりあえず、初めましての会話。

少しして、ボーイから女の子交代の声がかかる。

次の女の子が待機してるのを確認してお別れのご挨拶

ちょっと粘れば指名入るかな…

「もう交代だって。もう少しここにいたかったな」

なんて言ってみる。

「うん。でも俺きたばっかだし、他の子もみたいもん」


そうですか。今日いる子なら、私が1番かわいいと思うけどね
とか心の中で思ってみる。

「次くるのあの子?」

「うん。そうですよ!かわいいでしょ?」

とかあんまり思ってないけど一応ね。

「そっか…じゃぁ、ここにいれば。俺墨入ってる子だめなんだよね。」

確かに次の子ドレスだから入れ墨しっかりみえる。しかも結構かっこいい目の。

「いいの?嬉しい!」

ご指名ありがとうございます。

「でも俺今日1セットで帰らないと。」

「そうなの?なんか用事?」

「うん。ちょっと。」

あんまり長くいると会話探すの大変だし、別にいいけど。
それに、ここは粘らずサラッとした方がいい子に映る。

「でも来週またくるよ。俺言ったことは結構律儀に守るから」

お客さんの言うことなんて90%以上は嘘。だからそんな言葉全然気にしない。信じられるのは今日の稼ぎだけ…

「本当?じゃぁ来週も待ってるね!(ありったけ可愛く)」

まぁ本当にきて指名が入ればラッキーくらい。

一応携帯の番号教えるけど、営業電話やメールはする気無し。
お店に出勤して、お客さん待ちで待機してたら、メールしようかな〜くらい。

だって本業じゃないし。

1セットが終了しお見送り。
お客さんが少ないからボーイが粘るのを、私は止めた。

本当に来週もくるんじゃないかって思ったから。10%の可能性を感じて、すんなり返した方が自分の為のような気がした。


続く
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