°°ワガママの果て°°
アホみたいに泣くコイツを腕に抱きながら、自分の意志の弱さに笑えてくる。



いや…普段意志は強い方だと思う。
この泣き虫でワガママな
気まぐれちゃんが関わると、決まってこんな風に俺が俺じゃないみたいになるんだ。





”行かないで”


と泣き叫ぶ声を聞いた時、同時に親父の言葉が頭を過ぎった。


”どこにでも行け”





必要となんてされたことの無いこれまでの人生…
俺を必要としてくれる、俺の為に涙を流してくれる。
そんな大きな存在を突き離して行けるほど強くはない。





”独りにしないで”
なんて…はっきり言ってそれは俺のセリフだって…言ってやりたい。



お前にはみんなが羨むくらいの素敵な家族がいるくせに。
そしてなにより……









付き合っている男がいるくせに…








それでも俺はやっぱりコイツが好きで
そばにいると決意した。
分厚い雲が月を隠すこの夜に…。

< 107 / 160 >

この作品をシェア

pagetop