°°ワガママの果て°°
家の前にたどり着いたわたしは痛む胸を手でグッと抑えて玄関を開けた。



広い廊下の向こうからバタンバタンと
何かをひっくり返すような音がする。



慌ててパンプスを脱ぎ捨てて
音のする部屋へ向かうと、
そこにはクローゼットから母の服やバックを次々と出す父がいた。



「お父さん……お母さんは?」


恐る恐る話しかけると
父はやっとわたしの存在に気がついた。



「今から病院に連れて行く。
しばらく入院になると思うから…
園夏が荷物をまとめてくれ…
父さんにはわからない!」



「はい…」



小さく頷いて母のいつもの入院セットを用意した。





庭の裏に止めてある
普段は使わない父の大きなワゴン車に乗り込んで、後部座席に母を寝かせる。
わたしは母の隣に小さく丸まって
手を握った。


「園夏…お願いだから…安心させてね……」


か細い声に唇を噛みしめる。


「お母さん…ごめんなさい…」





「園夏!お前が心配ばかりかけるから
こういうことになるんだ!」


父の言葉が心をえぐっていく。

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