「異世界ファンタジーで15+1のお題」四




「やはりそうでしたか…
大臣にとっては、建国記念日等ただの口実のようなもの。
次期国王への指名をさせたいというのが一番の目的だったのでしょうね。」

数日ぶりに隠れ家に姿を現したシスター・シャーリーの話を聞いたギリアスは、一言そう言って顔を強張らせる。



「それで、国王のご様子はいかがなのです?」

「ギリアスさんに言われた通り、二人っきりの懺悔の時間をもつように大臣に頼みこみました。
そして、その際に、ジュネ様達があなたと連絡を取りたがっているとお伝しました。
国王はそれはそれはたいそう驚かれ、いろいろと聞きたそうにされていましたが、外に兵士達がいるから詳しいことは話せませんが、どうかお元気でいらっしゃるようにとお願いした所、その晩から早速少しずつお食事をされるようになりました。」

その話を聞いて男達の間から、安堵の溜め息が漏れた。



「それは良かった…国王を騙すのは心苦しいが…脱出の時までに少しでも体力を回復されると良いのですが…」

「そのことなのですが、国王は舞踏会の二日前に地下の牢獄に移されることが決まりました。前日には、遠くの国から舞踏会に来る用心をもてなすための夕食会を催すようです。
それで忙しいから、その前日に移す事を考えたのでしょう。」

「兵士長!
だったら、その時に…」

「……そうだな。
要人との会食となると酒も出るだろうし、次の日が舞踏会となれば、大臣も気を緩ませているはずだ。
会食はおそらく夜中まで続くだろうから、そのあたりに決行することにしよう。」

その言葉に、ケネスは両手を握り締め、それを力を込めて振り下ろした。



「良いですか、シスター・シャーリー。
あなたは、その頃に城を抜け出し、ロジャーのいる診療所へ向かって下さい。
後のことは、我々だけでやります。」

「で…でも、私にも何か……」

ギリアスは、厳しい眼差しでシスター・シャーリーを睨みつけ、ゆっくりと首を振った。



「国王が逃げたとなると、大臣は周りのすべての者達に疑いの目を向けるでしょう。
中でも国王に近付いていたあなたはきっと一番に疑われる。
そうなれば、あなたは命さえ危ないのです。」

「……私の命なんて……」

シスター・シャーリーは、ギリアスの視線から逃げるように俯いた。



「馬鹿なことを言うもんじゃない!
最初からそれは言っておいたはずです。
何よりも大切なのはあなたの命。
それに、あなたにはその先にもやってもらうことがある。
私達が国王をお連れしたら、すぐにロジャーと国王をどこか無事な所へ連れていけるように、手筈を整えておいてほしいのです。」

「……わかりました。」

シスター・シャーリーは、目を伏せたまま小さな声で答えた。
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