「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
「ところで、ギリアスさん、国王は僕達がなんとかして国王をお救いしようとしていることを、どうして国王に伝えてもらわなかったんですか?
伝えておいた方が、希望にもなるんじゃないでしょうか?
それに、救った後でお子様達のことは嘘だったなんて言えば、もっと国王のお心を痛めることになりませんか?」

「ライアン…残念だが、陛下のような状態の方に、救うことを言っても効果はないんだ。
陛下は、今、ルシアン様を失ったことで深い悲しみの渦に飲みこまれている。
出来る事なら、陛下はルシアン様の傍に行きたいと考えていらっしゃる程だ。
国のことももうどうでも良い…いや、そう言っては語弊があるが、今の陛下には様々なことを考えるお力はもう残っていないんだ。
たとえ、ご自分が処刑されてもそれも構わない…
そんな風に考えている方に、お救いに行くと伝えてもそれが何の役に立つと思う?
残念だが、何の力を与えることも出来はしない。
だが…お子様達は違う。
あの時は、陛下も何が起こったのかもよくわからないうちに、お子様達を見送られた。
無事に逃げ遂せたことで安心もされたと思う。
しかし、そのお子様達が連絡を取りたがっていると言えば、陛下はそれを気になさらないはずはない。
何事かが起こったのなら、なんとしてでもそれを助けようとお考えになるはずだ。
……もちろん、いつかは真実を話さねばならないことになるだろう。
それもそう遠いことではない。
国王はお怒りになるかもしれないし、失望されるかもしれん。
だが、それでも、やらねばならん!
陛下はそれ程に大切な方なのだ。
我々が…そして、国民達がどれほど国王のことを案じ、国のことを考えているかを知れば、きっといつの日か陛下もわかって下さる…
……私はそう信じている…」

男達は、ギリアスの長い話が終わっても誰もすぐには口を開かなかった。
その場には、しばし物音を立てるのさえ躊躇われる程の沈黙が続いた。



「ギリアスさん…私もそう思います。
国王にはきっと私達の気持ちが伝わる筈です。
ルシアン様を失った悲しみからきっと立ち直ってくださる筈です。」

ギリアスは、言葉の代わりに、シスター・シャーリーに向かって穏やかな笑みを返す。
その様子に、男達もどこか嬉しそうな笑みを浮かべ、何度も何度も頷いた。
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