「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
「残念ながら宝物庫の中の様子はわからんということか…
ライアン、他に部屋はないんだな?」

「あとは細かな掃除道具入れ等がありますが、広さ的にも警備的にもそれらは考えられないと思います。
その他にはめぼしい場所はありません。」

「そうか…なら、私達の閉じ込められていたあの場所か、或いは宝物庫ということになるか…」

「あらかじめどちらかがわかれば良いのですが…」

男達は、遅くまで国王救出の計画を話し合った。
ほんの小さな失敗さえも許されないその計画に、男達は真剣に知恵を絞る。









(僕だって、何かやらなきゃ…!
城の中で自由に動けるのは、この僕だけなんだから…)

夜も更けた頃、キルシュはそっと部屋を抜け出し、搭の近くの物陰に身を潜めた。
いつもなら誰よりも早く眠りに就くキルシュだが、その日は真夜中になっても少しも眠くはならなかった。
高ぶった神経が小さな物音一つにも過剰に反応する。



(まさか、もう行ってしまったのか、それとも計画が変わって……あ!)

キルシュは思わず飛び出しそうになった声をおさえるため、口許を両手で押さえた。




(王様だ!……あんなにおやつれになってるなんて……)

国王は猿ぐつわを噛まされた上に目隠しをされ、両手を後ろ手に縛られた状態で、二人の屈強な男達に両脇を支えられるようにして連れ去られて行った。
キルシュはその様子に心を痛めながら、身をかがめ注意深くその後を尾行ていく。



(酷い…!あれじゃあ、まるで罪人扱いじゃないか!
あいつらもこの国の者だろうに、なんて奴らだ!)

胸に込み上げる憤りを懸命に押さえこみ、キルシュは足音をしのばせ三人の後ろを着いて行った。



(王様はずいぶんと弱ってらっしゃるな、
足元もおぼつかない…
あれじゃあ、急いで逃げるのは無理だ。
誰かが背負って逃げた方が良いかもしれないな…)

目前に控えた脱出のことを頭に描きながら、キルシュは地下への階段を下り始めた。
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