「異世界ファンタジーで15+1のお題」四




「すごいじゃないか!」

「見直したぜ!」

いつもとは明らかに違う皆の視線に、キルシュは少し照れながらも嬉しそうな笑みを浮かべた。



「だが、キルシュ、もう二度とこんな真似はしないでくれよ。
たまたまうまくいったから良かったようなものの、万一みつかってたら……君は殺されていたかもしれないんだからな。」

「はい、そのことは考えていました。
でも、僕は明日からは厨房が忙しくて何の手伝いも出来ませんし、城の中を自由に歩けるのは僕だけですから少しでも何か役に立つことがしたかったんです。
でも、みつかったら僕にはなす術がありません。
だから、最後までは着いていかなかった。
この前、ライアンの見取り図を見てたので、彼らが地下牢の方に向かったとわかった時点で、そのまますぐに戻って来ました。」

「懸命な判断だったな。
キルシュ、ご苦労だった。」

ギリアスはそう言って、キルシュの肩を親しげに叩き、キルシュは恐縮したような顔をして俯いた。



「キルシュのおかげで、当日の行動がやりやすくなった。
明日の夜、全員で地下牢に向かい、陛下を救出する。
明日は要人の一部が、あさってにはさらに多くの客が訪れるから、城の中は慌しい雰囲気になっているだろう。
深夜まで働いている者も多いとは思うが、幸いながら、地下牢の方にはこれといった用はないと思う。
だからといって気を緩めるなよ!」

「あぁ…ついにここまで来たんだな!
腕が鳴るぜ!」

「ケネス、暴走するんじゃないぞ。
あくまでも陛下のお命を一番に考えるんだ。」

「わかってますよ。
俺は感情的なところもありますけど、肝心な所はちゃんと考えていますから!
兵士長、もう少し俺のことを信頼して下さいよ!」

「それは悪かったな…」

ギリアスは、ケネスに穏やかな笑みを投げ掛けた。
その様子に、他の者達も思わず微笑んだ。
決行の時を目の前にしていながら、不思議なくらい、皆の気持ちは落ち着いていた。
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