「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
「二人共離れるんだ!」

ギリアスの声と共に、三人の男が姿を現した。
いつもとは別人のようなギリアスが、鬼神のごとき雄叫びを上げ、男の身体を剣で見事に刺し貫く。
ジョーイとダンはその光景を目にする前に奥へと走り、それに、ケネスも続いた。




「すまなかったな…大丈夫か?」

剣を引き抜き、男の服で血を拭ったギリアスがライアンに声をかける。



「は…はい。」

「さ、行こう!」

凄惨な光景を目の前にして、真っ青な顔をして立ち尽すライアンの背中をギリアスは軽く叩いた。



「陛下!」

「誰だ!
何が起きた!?」

「今、お助けします。
ライアン、ここは頼んだぞ!」

ギリアスが奥へ向かおうとした頃、返り血に染まった三人がその場に駆け戻った。



「兵士長、奥の男を仕留めました。」

三人は、ギリアスに気合いのこもった敬礼をする。



「ご苦労だった。」

ギリアスもそれに敬礼を返した。



「ライアン、鍵を…」

ケネスがライアンに鍵を渡そうとしたちょうどその時、扉の鍵が開いた。



「陛下!」

「おまえたち…」

男達の瞳には、うっすらと込み上げた熱い涙が光っていた。



「陛下、安全な場所へお連れします。」

「私は…逃げるわけには…ここを離れるわけにはいかんのだ。」

「な…なにを…」

「こっちへ…」

牢を出たラーシェルは、奥の方へと進んで行く。
ケネスは階段の上で見張りをするセスを呼び、男達はラーシェルに続いて奥へ奥へと進んで行った。



「陛下、どちらへ行かれるおつもりなのですか?
この先は行き止まりになっております。」

「こちらで良いのだ。」

ライアンの言葉も聞かず、ラーシェルは進み続けた。
やがて、突き当たりの壁の前に行き着いた所で、ラーシェルは何かを探すように壁をまさぐり、ある地点に右手にはめた王家の指輪を押し付けた。



「あ…!」

その直後、壁の左側に白くぼんやりと光る枠のようなものが現れ、息を飲む男達の前で、ラーシェルはその枠の中に左手を押し付けた。



「わっ!」

今度は、重い音を立てて壁が後ろに下がった。
ラーシェルはその隙間から中へ入り、皆が続いたのを確認すると再び壁に左手を当てた。
すると、それをきっかけに壁はまた元の位置へ戻る。



「暗いから注意してくれ。すぐに部屋に着く。」

狭い通路の壁には光る石のようなものがはめ込まれており、それを頼りに男達は先へ進んだ。
しばらく歩くと、男達は扉の前に突き当たった。
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