「異世界ファンタジーで15+1のお題」四




「すまないが、そこのランプに火を灯してくれ。」

部屋の壁にも通路と同じぼんやりと光る石が埋めこまれていたが、部屋の様子は薄暗くてはっきりしない。
ランプに火を灯すと、ようやくあたりの様子がくっきりと映し出された。



「そちらのランプにも火を頼む。」

部屋は、男達が全員入っても、それほど圧迫感を感じないだけの広さがあった。
ラーシェルは、身体を投げ出すように、部屋の片隅に置かれた椅子に腰をかけた。



「陛下、この部屋は、一体……」

「緊急の隠し部屋だ。
ここは、今までほとんど使われたことがない。
私も父上に連れて来られた18の時が最初で最後で…そして、次にここを訪れるのはラークが18になった時だと考えていた。
……まさか、こんなことになるなんて、あの時は欠片程も…
……おまえ達もどこか適当な所へ掛けなさい。
その前に…この度のこと…深く感謝する。
本当にありがとう、面倒をかけたな。」

「陛下!」
「ラーシェル様!」

労いの言葉に、男達は胸を熱くし、国王の前に跪いた。
部屋の奥にはトイレや小さいながらも浴室や台所、食料庫等が設えてあり、ラーシェルの話によれば五~六人の者が一ヶ月程は生活出来るように常に整えられているということだった。
ラーシェルは、食料庫からワインを持って来るように命じ、男達はラーシェルにすすめられるままにそのワインを口にした。



「私は監禁されて以来、城の状況を全く知らされていない。
今、どういうことになっているんだ?
兵士はおまえ達の他にどのくらいいる?」

ワイングラスを置き、真っ直ぐに向けられたラーシェルの質問にギリアスの表情は俄かに曇る。
ラーシェルもそのことで、現在の状況が良くないということは感じ取ったが、ギリアスが話した内容はラーシェルの予想を遥かに越えるものだった。



「……たった、これだけ…?
城の兵士は四人だけしか残っていないというのか?」

平和を好み、実際ずっと長い間戦のなかったソリヤ王国には、兵士は最高に多かった時期でも五十人しかいなかった。
そのことが、平和を望むという意志表示になるのだとも考えられていた。
兵士達の中にはジュネとラークの事件を知り、逃げ出した者、本心からではないにしろ大臣に忠誠を誓った者達もいたが、大半は大臣に屈することなくそのために多くの者が命を失ったことを知り、ラーシェルは打ちのめされたように頭を抱えて深くうな垂れた。
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