「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
「陛下、これだけではありません。
あと一名、ロジャーという兵士がおります。
奴は、拷問にあいあやうく殺される所でしたが、このライアンやセスが助けてくれたおかげで命拾いをしました。」

「……そうだったか…
他の者は、皆、殺されてしまったのだな…
すまなかった…本当にすまないことをした…
……しかし!これだけは信じてくれ!ジュネとラークは断じて悪魔の手先等ではない!
それどころか、あの子達は…」

そこまで言って、ラーシェルは不意に口をつぐんだ。
もちろん、その続きを聞きたい気持ちはあったが、ギリアスはあえてそれを尋ねることはしなかった。



「陛下、我々は誰もそんなことを考えてはいません。
あのお健やかなジュネ様やラーク様が、悪しき者であろう筈がありません。
悪魔の手先はあの大臣です!
自分に忠誠を誓わない兵士達を殺すように命じ、ちょっとしたことで民間人をも捕えるあの大臣こそが悪魔の手先に違いありません!」

ギリアスのその言葉に、ラーシェルはとても幸せそうな笑みを浮かべた。



「ありがとう…
だからこそ、大臣にこの国を任せることなど出来ないのだ。
私は、明日、建国記念の舞踏会へ出席させられることになっていた。
明日の早朝から身支度を整えると言われていたから、私は最初その者達が来たのかと思ったのだ。」

「そうだったのですか…しかし、断ったりしたら大臣は陛下に何をするかわかりません。」

「むろん、そのことは考えていた。
だから、私はその場で監禁されていることを話し、他の国の誰かに救ってもらおうと考えていたのだ。
牢に入れられていたのでは何をすることも出来ない。
多くの人々の集まる場所に出る明日こそが唯一無比のチャンスだと考えていた。」

「なんと無謀な…!
そんなことをすれば、大臣は、陛下を乱心したとでも言って、最悪の場合はその場で……」

ギリアスは言いかけた言葉を飲みこみ、俯いた。



「……そうかもしれないな…
……もしかしたら、私は心のどこかでそういうことを望んでいたのかもしれん。
おまえ達は命を賭して私を助けに着てくれたというのに…ふがいない国王だとさげすまれても仕方がない…
私は…自分でもこんな自分がいやでたまらない。
この国を…国民を愛する気持ちが変わったわけではないのだが、今の私はいまだにルシアンの死を乗り越えることが出来ぬのだ。
なによりも国のことを真っ先に考えねばならぬこの非常時に、私の心の中からルシアンのことを拭い去ることが出来ず…苦しいのだ…苦しくてたまらんのだ…」
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